ブログ京橋店
塩の世界
3月も半ばを過ぎ、皆様どの様にお過ごしですか。
春眠暁を覚えずとあります通り、つい朝寝坊をしてしまいそうな今日このごろですが、今回は「塩」についてご紹介したいと思います。
塩は人間が生きていく上で欠かすことのできないもので、生理的に健康を維持する為に必要なものです。
〈塩の大分類〉
まず、塩は大きく3種類に分けることができます。「海水塩」「岩塩」「湖塩」です。
・海水塩:塩全体の生産量の3割程度を占めるといわれており、ミネラルを豊富に含んでいます。その中でも「天日塩(干して作る)」と「せんごう塩(煮詰めて作る)」が主にあります。
・岩塩:ヒマラヤやアンデスなどの山脈が有名ですが、海だった土地に地殻変動が起こったことにより海水が閉じ込められ、濃縮されたナトリウムの層になったのが岩塩です。ピンク色のものも見たことがあると思いますが、あれは鉄分を含んでいるからです。海水塩に比べるとしょっぱいです。
・湖塩:生産量はもっとも少ないです。ウユニ塩湖が有名。湖塩は、海だった土地がナトリウム層に変わる途中段階だそうです。
上記が大分類ですが、肝心な「味」は塩に含まれているミネラル成分によって変わってきます。カルシウムが多いものは甘味、マグネシウムが多いものは苦味、カリウムが多いものは酸味、ナトリウムが多いものは塩辛味(しょっぱい)が強く感じられるといわれています。
皆様がご自宅で使われるであろう食卓塩は、塩化ナトリウムを凝縮しているためしょっぱいと感じられるものかと思います。
構成成分によって、味の違いがあるとはやはり奥が深いですね。
〈塩の用途〉
さて、料理の上では、単に味を調えるための調味料としての役割を果たすばかりではなく、調理の過程において、材料の下処理や浸透圧を利用した物理的な処理に使われたり、保存料として材料を塩漬けにして加工したりするなど、幅広い使い方をすることが多いです。
前述したように塩を海水から作ったり、また天然の岩塩をそのまま用いたりしてきました。また、塩は生活に欠かせない重要なものであったので、宗教的な神事にも欠かすことができず、塩をもって清めるという概念があり、単に化学的な塩の殺菌効果ばかりではなく精神的な意味も持っています。
〈塩味の特性〉
調味料として材料に味を付ける場合に、塩味は美味しさを感じる幅が非常に狭く、塩味がつよいと尖った味が舌に感じ、また、少ないと物足らない不味さを感じます。塩加減という言葉が示すものは、多くても少なくて美味しくないことを意味するもので、塩の使い方は非常に難しいです。
〈調味の手順(サシスセソ)〉
塩は味のしみ込む速度が非常に早いため、最初から塩味をつけてしまうと、他の調味料より先に味がついてしまうので、なるべく遅く入れるのが好ましいです。サシスセソと教えられるのは、その理由です。
塩加減という言葉は、料理に味を付ける調味料としての役割を示すもので、他の調味料と相違するのは、塩の場合には素材のもっている本来の味を塩を加える事によって引き出すということです。
今回は私たちの生活に馴染みの深い「塩」を取り上げましたが、
当店でも、ぜひサシスセソの塩梅を味わっていただければと思います。
皆様のお越しをお待ちしております。
瓢喜京橋店 料理長 中川昌明