ブログ銀座三丁目店
今が旬の純菜について
梅雨明けが待ち遠しい今日この頃、いかがお過ごしでしょうか?
さて、今回は今が旬!純菜についてお話しさせて頂こうと思います。
純菜とは、沼や池に自生するスイレン科の植物です。茎は水底の泥のなかの根茎から長く伸び、夏季には蓮の葉のように水面いっぱいに浮葉を広げます。水面下の、寒天状のぬるぬるとした透明な粘質物の付いた幼葉(若葉、若芽、新若芽、等と呼ばれる)や葉柄を摘んで、食します。生のものを味わえるのは主に5月~8月上旬頃までと、僅かな期間のみです。古くから食用とされており、「古事記」や「万葉集」などに奴那波・沼縄(ヌナハ、あるいはヌナワ)という記載がみられます。江戸時代中期の「農業全書」でも、山野菜の一つに挙げられ、栽培方法についても触れられています。
とても淡泊な味わいですが、水中に芽吹く「エメラルド」とも讃えられる、涼しげな風情とツルッとした食感・咽越しが、夏の到来を感じさせてくれます。
・純菜の有名な生産地
秋田県北西部、男鹿半島の北側に位置する三種町は、永年にわたり、生産量日本一を誇る「純菜の里」です。古くから純菜の自生する池沼が多く存在しており、潤した水源は白神山地からのミネラル豊富な水や、湧き出る地下水を水源とするなど、美しい自然環境が質の高い「純菜」を育みます。
・純菜の採り方
純菜の摘み取りには「純菜船」と言われるものが使われています。一畳程の大きさの、簡単な木造り船です。一人で収穫するときには、舳(へさき)にブロックの重しを配し、作業者は船尾に位置してバランスをとりながら、操り棒で池沼を移動します。水面に身をかがめて、水面に浮く純菜の成葉をめくりあげ、水中の若芽を指先の感覚ひとつで察知し、爪を使って茎から切り取ります。
・栽培のポイント
- 純菜は、北海道、本州、四国、九州に広く分布し自生している食物ですが、生育環境である自然池沼や古いため池の改廃や水質汚濁などにより、絶滅の危機に瀕しています。
- 純菜の生長水温をみると、春季の水温10℃前後で生長を開始し、水温上昇とともに、生長を続け、夏季25℃前後でよく生長繁殖します。水田の水温よりも5℃ほど低いのが適温です。
- 純菜は綺麗な水によって生長します。酸、アルカリ、塩類、過剰窒素、鉄分などによって、すぐに生長阻害されてしまう、大変デリケートな植物なのです。
- もちろん、純菜は農薬にも弱い植物です。ですから、継続的な生産のため、害虫防除として最低限の純菜用農薬の使用にとどめています。
・純菜の豆知識
- ことわざ
「純菜で鰻をつなぐ」という喩えをご存じですか?
→どちらもぬるぬるしていて縛りようのないことから、「馬鹿馬鹿しくてできないこと」という意味で使われます。
関西は純菜が早くから食材として重宝されてきた地域です。その関西で「純菜な奴」という言葉を聞かれたら「どんな奴」をイメージしますか?
→つかみどころが無く、「頼りにならない奴」ということです。
- 純菜は環境指標
純菜は、水質汚濁、雑草繁茂、高温障害、農薬などに敏感に反応するため、栽培対策を誤ると、容易に死滅してしまいます。この理由から純菜は自然環境の健全性を測る一つの指標とみることができるのです。
・純菜の食し方
純菜の食し方として一般的なものは三杯酢(酢、味醂、薄口醤油を同量で合わせたもの)に浸したものや、会席料理の御椀に入れたり、天麩羅、素麺風、鍋にたっぷり入れたりと、色々食し方があります。
当店では、前菜に土佐酢を出汁で割った物を純菜にかけたり、会席料理の御椀などに使用しております。
今でしか味わえない逸品となっております。是非お客様のご来店スタッフ一同心よりお待ちしております。
瓢嘻銀座三丁目店 料理長 石井 学