ブログ銀座店
冬の京野菜で健康祈願
寒い日が続き、温かい食べ物が恋しい季節となってきました。皆様如何お過ごしでしょうか?
寒い日のしゃぶしゃぶは絶品の一言です。ご来店お待ちしております。
さて、今回は京都の冬についてご紹介したいと思います。
冬の京都は本当に寒く、「京の底冷え」と言われていますが、実際の気温はそれほど寒くなく零下10℃を下回ることも無ければ、何日も雪が降り続くわけではありません。ただ、京都的に柔和な寒さの中に落とし穴のように瞬時に寒い時があります。これを京都では、「ちめたい!」と言います。この「ちめた」さが冬の京野菜にしっかりと旨みを育て、京の食卓へと登場させます。
又、この「ちめた」さのもたらすうまさが、冬の京野菜のほうが、夏の京野菜より美味しいと言わせるのだと思います。九条葱のぬめり、七条せりの香り、聖護院蕪の甘み、海老芋のねっとりとしたうまみ、この冬の京野菜の大事な特徴と共通点はそのやわらかさにあると思います。
<九条葱>
夏の九条葱を京都人は「ばしばしどすなー、歯につまりまっせー」などの言葉をかわします。つまり、繊維が硬く歯につまるほどだとのことです。(個人的には、夏の九条葱も嫌いではありません)一方、冬の九条葱は「やわらこうて、おいしおすなあ、すき焼きにはお肉とお葱だけでよろしおす」と言うそうです。すき焼きの葱は、関東では根葱の白い部分が中心ですが、関西では葉葱の青い部分を好んで食べます。(どちらも美味しく、甲乙つけ難いです)やわらかくなった九条葱は、肉にも勝ると言い、玉子との相性も良く、冬の時期だけ親子丼に九条葱が入るほどです。(鴨肉と合わせても最高です)
<聖護院大根、聖護院蕪>
また、冬のやわらかさで忘れてはいけないのが、聖護院大根、聖護院蕪です。彼らは、やわらかいが煮崩れしないことを信条としていて、口の中に入ってはじめてトロけると言う密約があるように思えます。出汁を良く含み、煮崩れせず口の中に入れると雪のように儚く消えていくような味わいです。形状がしっかりしていても口の中でやわらかくとける冬の京野菜は、絶品です。
11月末には、京都の上賀茂神社付近ですぐきを漬けているのが見られます。長さ4mから5mのさおの先端に石をつるした重石をかけられ4斗樽(1合の400倍)がずらりと並びます。又聖護院蕪の生産時期にあわせて、お漬物屋さんでは千枚漬けを仕込み出します。千枚漬け専用の大きなかぶら切り鉋で「シャコ、シャコ」する音が聞こえると秋が終わり冬の訪れを感じさせます。
大根が甘く美味しくなる12月の初旬、無病息災や開運を祈願して大根を煮て食べる風習が関西地方を中心に各地に伝わっています。中でも有名なのが、京都の千本釈迦堂と了徳寺の「大根炊き」、千本釈迦堂大報恩寺は真宗大谷派(東本願寺)の寺で、国宝の本堂は1227年に建立され、応仁の乱による焼失を免れた京都最古の建造物。本堂の柱にはその時の槍傷が今も残されています。鎌倉時代に三世慈禅上人が丸大根の切り口に梵字を書いて魔除けの祈祷を施し、それを煮て参詣者に供養したのが大根の始まりとされる。釈迦が悟りを開いたと伝えられる12月8日にあやかり、7日と8日に催されます。2日間で約5000本の大根を直径1mもある大鍋でお揚げさん(油揚げ)とともに煮て有料で振舞われます。昔は寄付されたいろいろな大根が使われたが煮え方に差がでるので、近年は青首大根にしているそです。食べれば、中風や悪病除けになると伝えられ、毎年参道には長い列ができます。
了徳寺は「鳴滝のだいこでら」ともよばれる了徳寺の大根だきは、建長4年(1252年)に、親鸞聖人が月輪寺からの帰路この寺に立ち寄り説教した際に(怒っているわけではないです)村人が大根を煮てもてなしたという伝説に由来。親鸞聖人の行事としても、とり行われている。親鸞聖人に差し上げた大根は塩味だったとされ、本堂に祀られた親鸞聖人の木造には、昔ながらの塩味の大根煮が供えられているそうです。参詣者にはお揚げさんと一緒にしょうゆで煮た大根が有料で振舞われている。2日間で使う大根は約3000本で亀岡産の篠大根、青首大根が用いられているそうです。
このように京都には、野菜を食べて健康を願う、庶民信仰が今も息づいています。
皆様も旬で栄養価が高く美味しい食材を食べて健康祈願をしてみてはいかがでしょうか?
瓢喜銀座本店 料理長 松本直樹