ブログ赤坂店
日本料理の色々~料理長 石田が語る~
瓢嘻 赤坂店、料理長を務めております石田と申します。
3月に入り、いよいよ春ですね。
皆様の中にも引っ越しなど、新生活の準備でお忙しい方もいらっしゃるかとは思いますが、健康に心穏やかに生活できることを心より願っております。
では、今月も日本料理の文化や食についていくつかお話しできればと思います。
まずは、「精進料理」についてお話ししていきたいと思います。
皆様は精進料理というと、どのような物を想像されますか?
魚や肉、卵といった動物性のたんぱく質を使わないといった内容を想像されるかと思いますが、実は奥が深く、寺院の数ほど種類があると言っていいほど、それぞれの寺院創建以来の特徴を持つ献立がございます。しかし、料理の基本は五味、五法、五色にのっとり造られております。
「五味」とは「甘、酸、塩、辛、苦」のことであります。
ひとつひとつの味を出すのはそれほど難しくありませんが、難しいのはそれを調和させることです。そこに精進料理の妙味も有り修業という言葉が冠せられるほど難しさがございます。
実際に精進料理に出会ったときには、料理の一つ一つがどのように調和しているかをじっくりと味わっていただければ感じるかと思います。
おそらく100年とか200年とかいった年数では到底達しえないような完成度をそこに感じる方もいらっしゃるかとは思います。素朴な材料で、この上ない完成度をもつ料理というのは現代では稀になってきております。精進料理は日本料理の原点の一つとといわれるのも故なしと感じる人が多いのも、それだけ理由があるからに他なりません。
また、「五法」とは「煮、焼、蒸、揚、生」でそれぞれいろいろなバラエティをもった調理法がございます。
基本は材料の持ち味を生かすということでありますが、これは料理の原則で精進料理も同じでございます。この五法のうち、単独あるいはいくつかを組み合わせたものが料理として提供されております。
そして、「五色」とは「赤、青、黄、黒、白」のことで、片寄らせず見た目も味の上でも調和がとれてなくてはいけません。
各寺院でそれぞれ工夫を凝らした五色がでてきますが、素朴な中にも清冽な美しさが漂っております。各寺院では開山忌などの特別な日に、五味、五法、五色にのった膳が一品ずつ別々に味付けされたものが取り合わされて提供されます。
代表的な精進料理の献立ですが、基本は「一汁三菜」で一年中変わらないのが原則で、修行僧は厳格にこれを守っております。しかし、開山忌などの特別な日にはわずかに料理が増やされます。それがのちに接待、供養のための本膳料理として独立し、一般に精進料理となったといわれております。
「開山忌」とは、開祖の命日にあたる日で信徒といえども招かれないこともあったりあるいは参加者に料理がふるまわれたりするなど各寺院により異なります。
また、料理もその寺で作る場合とそうでない事があり、さまざまでございます。
本来は仏教思想を持った料理という意で、仏教の教義に従った食事を指します。動物性食品だけではなく葱やニンニクなどの刺激の強い野菜も禁じられております。修業中の僧侶が日常食としているもの、またその食べ方を一般人が称して精進料理といったものをいいます。教義には動物性食品が入らないものをいいます。
本膳料理、茶懐石、懐石料理などの呼称が料理の形態を示すのに大して食事の様式ではなく、料理の内容を示しているという点で大きな特徴をもっておりほかの料理に影響を与えたそうです。
寺院の中だけに存在した「精進料理」が、一般社会で一つの料理様式として確立するのは、鎌倉時代から室町時代にかけてであり、禅宗の移入に影響を受けております。永平寺流、大徳寺流時代はさがるが普茶料理のおうはく流などさまざまな流派の料理が形成され、発展、浸透していきました。
また、懐石料理とは茶事を催すときに茶を振る舞う前に供する食事のことをいいます。
主催者である亭主の手料理で、給仕も亭主が行うのが原則となっております。千利休が唱えた詫び茶の精神に寄ればあくまでもお茶を飲むことが目的であるため料理は、素朴で簡単な物を旨とし一汁三菜が基本のようです。
「南方禄」によれば、一般に禅宗の僧侶が修業中に温めた石を懐に抱いて寒さと空腹をしのいだことから、上をしのぐ程度の粗末な食事という意味で、それを由来に詫び茶の料理は懐石とも言われるそうです。
日本料理、奥が深いですね?
さすがユネスコの無形文化遺産に登録されただけのことはございます。
今回も長々とお付き合い頂き、ありがとうございます。
それでは、スタッフ一同皆様のご来店を心よりお待ち申し上げております。
瓢喜赤坂店 料理長 石田龍太郎