ブログ赤坂店
刺身と造り
新鮮な魚の切り身を生のままで食する献立として、「造り」や「刺身」という呼び方があります。
皿に美しく盛り付けられた旬の生魚は、日本料理の代表ともいえます。
本日は、「刺身」と「造り」の違いについてお話しをさせていただきたいと思います。
切り身が醤油と出会って開花
日本は、四方を海で囲まれていることから、古代から鮮魚を生食する習慣があったそうです。
そうしたことから、今も残る言葉「なます」は、生で食べる新鮮な魚肉や獣肉を細切りにして調味料を合わせた料理を指したものだったようで、これが発展していったのが「刺身」です。
「刺身」は、切り身を皿に乗せただけのシンプルな料理で、煎り酒(削り節、梅干、酒、水、溜まりを合わせて煮詰めたもの)などで食されていたのですが、江戸時代に醤油が普及したことで、江戸の地で大きく開花していきます。
江戸時代中期より、生魚の生臭さを抑える濃口醤油が大量生産をはじまったことで、生の魚+醤油という抜群の相性の刺身が広まっていくようになりました。
「煎り酒」で食されていた切り身の食べ方は、醤油におろしワサビを添えた形に変わっていったのです。
また、醤油の普及は、生の魚と飯を合わせて醤油をつけて食べる握り寿司につながることにもなりました。
刺身
「刺身」は、食材を生のまま切った料理のことで、主に魚の切り身全般をいいます。
「切り身」から「刺身」へと呼び名が変わったのは2つの説があるようです。
①武家社会では「切り身」の「切る」という文字は縁起が悪いとされ、「刺す」という言葉に変えた「刺身」と呼ばれるようになった。
②切り身にしてしまうと魚の種類が分からなくなるので、、尾頭や尾ビレを実際に切った身に刺していたことから「刺身」と呼ばれるようになった。
刺身の素材は、生の魚を使うことが多いものの、必ずしも食材は魚に限られません。
鶏肉や牛肉、馬肉などの肉類、たけのこやきのこ、こんにゃくなどの刺身もございます。
また、食材によっては生のままではなく、湯通しをしたものも使われることがあります。
造り
「造り」は、主に魚の切り身を盛り付けたもののことをいいます。
「造り」という呼び方は、関西で生まれました。「お刺身」という言葉も縁起が悪いとされ、「造り身」と呼ばれ、そこから「造り」「お造り」へと変化したようです。
もともとは「造り」も「刺身」と同じように魚の切り身全般の呼び名でした。
しかし、現在ではその意味は少しずつ変わってきており、魚の切り身をお頭や他の食材を添えて盛り付けたものを「造り」と言います。
また、「造り」には、ただ切り身にしただけではなく、松皮造りや昆布締めなどのようにひと手間かけて造ったものやこだわりを持って美しく盛り付けたもの、舟形の大皿にもって供するものを指す表現として「刺身」と区別されることもございます。