ブログ赤坂店
伝助あなごと真蛸について 料理長ブログ5月~赤坂店料理長 石田龍太郎が語る~
瓢嘻 赤坂店、料理長を務めております石田と申します。
5月に入り、いよいよ暖かくなってきましたね?皆様も新生活をスタートされた方も多いかと思います。
さて、今月も料理や食に関係する事をいくつかご紹介できればと思います。
〈伝助穴子〉
まず、「伝助穴子」についてお話しして参ります。伝助穴子といいますとあまり聞きなれない名前かとは思いますが、穴子の中でも特に大きいサイズの1本300g以上の物を言います。鱧のように骨切りしないと食べられないのが大きな特徴であります。当店では1本700g以上の物を使用しておりますが、脂ののりがとても良く、お客様からも好評をいただいております。
食べ方といいますと、照り焼き、酢橘を絞っての塩焼き、天婦羅などございますが中でも一押しなのが、焼き霜造りです。鮮度の良い伝助穴子は、サッと表面を炙ってお召し上がり頂くのが、最高かと思います。
また、その「伝助」というその名前の由来ですが、兵庫県の昔話に出てくる「大きくて役に立たない」伝助という人物からとっているようです。大きい穴子も大きくて骨が太く、食べにくいため昔は捨てられていたことから、「伝助穴子」の名前が付いたとされております。昔は捨てていたなんてもったいないですね!私個人としては数あるお造りの中でも伝助は一押しでございます。
〈真蛸〉
次は「真蛸」についてお話して参ります。
一般的に蛸といいますとこの「真蛸」を指しますが、蛸の頭と思われている部分は実は胴体であります。では頭はどのあたりかといいますと、目があります場所の周辺になります。周囲の環境に合せて数秒ほどで体色を変えることができるため、無脊椎動物のなかでは特に知能が高いと考えられております。浅い海の岩礁やサンゴ礁の生息しますが、外洋に面した地域に多く、湾内には少ないとされています。真水を嫌いまして汽水域には生息いたしません。昼は海底の岩穴や岩の割れ目に潜み、夜に活動して甲殻類や二枚貝を食べます。腕で獲物を絡めとり毒性を含む唾液を注入して獲物を麻痺させ、腕の吸盤で固い殻もこじ開けて食べてしまいます。ヒトに対してもかなりの毒性を発揮し、咬まれた場合は相当な期間痛みが続くこともございます。天敵はヒトの他にも海鳥、ウツボ、サメ、エイなどがおります。危険を感じると墨をはき、敵の視覚や嗅覚をくらませます。腕を自切することもでき、欠けた腕はしばらくするともとどうりになります。繁殖期は春から初夏で、交尾したメスは岩陰に潜み、長径2.5mmほどの楕円形の卵を数万個から数十万個も産むとされております。真蛸の卵は房状にかたまり、フジの花のように見えることから「海藤花」(かいとうげ)とも呼ばれます。
メスは孵化するまで餌を摂らずに卵の下に留まり、海水を吹き付けたり、卵を狙う魚などを追い払って卵の世話をいたします。卵は一か月ほどで孵化しますが、メスは孵化を見届けた後にほとんどが死んでしまうそうです。孵化直後の子蛸は体はほぼ透明で、胴体部分が体の大部分を占めますが、体には色素胞があり、腕にも吸盤がございます。子蛸は海流に乗って分布を広げますが、この間に多くがほかの生物に捕食されます。海底に定着した後は2~3年で急激に成長し、繁殖して寿命を終えます。
白いものを餌として認識するようで、ラッキョウを餌にして釣りをするそうです。ミカンの栽培が盛んな地域では、海にミカンが落ちた時にそのミカンを食べている様子も目撃されております。
特に有名な産地としては瀬戸内海でとれる「明石蛸」が有名ですが、アフリカ、モロッコなどの諸外国からも輸入がございます。一方蛸を食べる文化が無い欧米地域(スペイン、イタリア、ギリシャなどを除く)ではデビルフィッシュ(悪魔の魚)と呼ばれたりもするそうです。
主な料理としては、お造里、お寿司、天婦羅、煮物、焼き物、しゃぶしゃぶなど幅広く調理技術が適応される、料理人にとって非常に扱いやすい食材でございます。
今回も長々とお話しさせて頂きましたが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。
それでは、皆様のご来店、スタッフ一同心よりお待ち申し上げております。
瓢喜赤坂店 料理長 石田龍太郎