ブログ赤坂店
「牡丹海老」(ボタンエビ)について
「瓢嘻 赤坂店」の料理長を務めております石田と申します。
3月に入り、いよいよ春ですね。
皆様の中にも引っ越しなど、新生活の準備でお忙しい方もいらっしゃるかとは思いますが、
健康に心穏やかに生活できることを心より願っております。
では、今月も日本料理の文化や食についていくつかお話しできればと思います。
今回「牡丹海老」(ボタンエビ)についてお話しさせて頂きます。
「牡丹海老」は、体長は13cmから20cmを超える大型のものもおります。
体色は濃いオレンジ色で、鮮度が落ちると、次第に黄色っぽくなるのが特徴です。
額角(がっかく)の中央部付近と背部の赤味が濃く、殻から内臓が透き通って見えます。
第1 – 5腹節の側面に各2個の赤い不定形の斑紋(はんもん)があり斑紋が牡丹の花びらを散らしたように見えることが名前の由来であるという説と、体色が全体に赤く牡丹色が連想されたことが由来であるという説がございます。
額角は頭胸甲(とうきょうこう)の1-1.5倍と長く、頭胸甲の背面の隆起はトヤマエビなどと比べると低いようです。
日本特産種で日本海にはいなくて太平洋側の宮城県沖以南だけに分布する日本固有種で、大陸棚と深海の境の水深300-500mあたりに生息致します。
南に行くほど生息域は深くかつては福島県の小名浜沖、東京湾、三重県の沖、高知県の土佐湾などでも獲れたようですが次第に枯渇し、千葉県の銚子沖と静岡県の駿河湾などで少し獲れるだけになってしまいました。
市場には「牡丹海老」の名で近縁種の赤いエビが出回っていることがあり、10月から5月にかけて、底引き網漁で捕獲されます。
牡丹海老は傷みやすいので、生きたまま持ち帰るためには鮮度を保ついろいろな工夫が必要であります。
卵は青緑色でプチプチして美味しいです。
その大きさは3.4 × 2.3mmでタラバエビ属では最大であります。
卵が大型なので繁殖力が弱いという特徴があります。
本牡丹は海老の中でも漁獲量が少なく、とても高価なので、料亭や高級寿司店以外であまり見かけられない物です。
刺身や寿司で食べられております。
さらに、しゃぶしゃぶやみそ汁、塩焼き天ぷらやフライにもなり、殻まで食されることがあり、漁期と同じ秋から春が旬で、生の身は弾力がありますがとろけるようで甘いのが特徴です。
味噌(海老味噌)はメスよりオスが多くもっております。
好む人は頭をすすって食べたりし、味噌は実際には、肝臓や膵臓の機能をもつ中腸線であります。
子持ちボタンエビも販売されています。
標準和名がトヤマエビ(富山海老)も牡丹海老として売られております。
むしろ牡丹海老といえば富山海老のほうが圧倒的に多く流通しております。
富山海老は富山湾、日本海、北海道、ロシアのオホーツク海などで漁獲されます。
オレンジ色っぽい本牡丹に比べて富山海老は赤味が濃く、鮮度が落ちても本牡丹より赤味が残ります。
富山海老はキロ 2,000円から5,000円といったところで平均は本牡丹より安いようです。
それでも20cm前後の体長が立派で身に弾力があり、本牡丹に似た美味しさで人気があります。
カナダやアラスカから冷凍ではいってくる輸入もののスポットエビも「牡丹海老」と称され、高級ネタとして回転寿司や通信販売で出回っています。
カナダボタン、スポットプラウンともいいます。
頭胸部に白い縦縞があって見分けやすく、第二および第五腹節に白いスポットがあることが名前の由来であります。
ほとんどが冷凍物ではありますが最大25cmと身が大きく、太って立派なので高値で安定しております。
キロ 3,000円から9,000円などです。
三陸、相模湾、琉球列島など太平洋岸に生息するテラオボタンエビ(寺尾牡丹海老、寺尾牡丹蝦)(白牡丹;はくぼたん)も「牡丹海老」と称され、福島産が少量のみ流通しております。
頭部に縦一列になって10本以上生えている白っぽい額角が特徴的で刺身、塩焼き、味噌汁で食され、弾力は超プリプリ、旨みは一級、キロ 8,000円から13,000円などでございます。
今回も長々とお付き合い頂き、ありがとうございます。
皆様のご来店を、スタッフ一同、心よりお待ちいたしております。
瓢嘻赤坂店 料理長 石田龍太郎