ブログ京橋店

2018.2.1

雪室について~天然の冷蔵庫~

天然の冷蔵庫 雪室とは

 

 

今回は、雪国上越に伝わる、「天然の冷蔵庫」雪室についてお話したいと思います。

しばらくの間、お付き合いください。

冬の間、降り積もった雪で山を作り、藁などを使って雪を囲い、夏まで貯蔵して活用するまさに雪国ならではの知恵。上越地域では「雪穴(ゆきあな)」と呼び、暮らしの中に用いられてきました。

上越地域では、水揚げされた魚を、雪と一緒に運んだのです。料亭や旅館などでは「雪穴」から雪を運び出し、夏場の冷蔵庫として活用していました。そのほか、隣村からの求めに応じて保存しておいた雪を切り出し、荷車で運んだという話も。

雪室はむかしから上越での生活に根ざした存在でありました。

 

例えば、雪室の中にお米やお酒、野菜などお入れることを、「雪中貯蔵」と呼び、雪国では長くしたしまれてきました。この方法では、米や野菜の質を落とすことなく保存できるだけでなく、程よく熟成させることも見込まれています。お酒や味噌、醬油などの醸造品では、熟成が進むことでいっそうマイルドな味わいに。その他、お肉の熟成にも、塩を抜いた塩引き鮭の冷風乾燥にも使われるようになりました。

電気冷蔵庫では、通常、設定温度に対してプラスマイナス2~3°Cまで下がってしまい、中に入れた食品や農作物は凍ってしまうことも。

一方、雪に覆われた室内は、冬場はもちろん夏場も天然の冷気で冷やされ続けることで、おんどはつねに0度ほぼ一定に保つことができます。

 

雪室と冷蔵庫の違い

食品にストレスを与えない雪室。普段使っている冷蔵庫で保存とは、ちょっと次元が違うのです。雪室貯蔵の効果としては食物が自らの凍結を防ぐために、含有するデンプンを糖化。ショ糖を増加させます。 アルコールと水の分子会合が解け、水素結合します。そのことにより、口当たりがマイルドになります。  低温高湿度に保たれるため、呼吸や乾燥を抑え、鮮度をよりよく保ち、貯蔵できます。酸化反応の速さが鈍ることで、酸化による食品の劣化を防ぎます。不快な臭いの成分を抑えるだけでなく、生成も制御するため、食品の風味は向上します。雪冷熱の活用でランニングコストを削減。また、二酸化炭素を出さないため、クリーンエネルギーとしても注目されています。

 

雪室には、施設としていくつかのタイプがあります。

雪室推進プロジェクトで使っている主な雪室は、「自然対流方式」と呼ばれています。これは、電気を使わず、雪によって冷やされた空気を倉庫内に循環させるものです。中でも、室内に貯蔵庫を設け、雪の冷気によって食品を冷蔵、貯蔵することを「氷室型」倉庫全体を雪で覆い、あらゆる面からの冷気で食品を冷蔵、貯蔵することを「雪室型」と分けられています。例えば、雪の下に寝かせて春に収穫する「越冬野菜」。雪下人参や雪下大根などに代表されるこれらの食品は、「雪室型」の原理を応用して作られているのです。

根菜類は、その種類にもよりますが、温度約4°Cくらい、湿度80~90%以上で保存貯蔵するのが望ましいと言われています。雪室は、まさにその条件を満たしており、野菜の呼吸熱で雪室内の雪がゆっくりと解けだし、低温多湿の状態を保ちます。

現在、ヤーコン・アピオス・長芋・じゃが芋・リンゴが雪室に入っており、じゃが芋に関しては、一般的なじゃが芋の糖度が5程度に対し、収穫から1ヵ月半貯蔵したものは、糖度が7.5に増えております。また、一緒に酒をビンごと貯蔵しておりますが、酒の味も変わる効果があります。雑味が少なくなりそのもの本来の甘さが引き立つことにより、すっきりした甘さ、おいしさの秘密だったのです。

本当においしい雪室野菜を食べるなら産地で食べるのが一番。

春先に雪国に出かけて雪室野菜をご賞味してみてはいかがでしょうか。

お付き合いいただきありがとうございました。

 

京橋店 料理長 大日向 勝弘

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