ブログ西麻布店
寿司の先祖なれずしとは?
夜の寒さが一段とこたえる時期になりましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
なれずしとは
今回は、現在私たちが口にしている寿司の先祖とも言われている「なれずし」についてお話させていただきます。
冷蔵庫などまだなかった時代、「なれずし」は、人々の知恵と自然の恵みと幾つかの偶然によって生み出された偉大な発酵食品の一つです。
地方によって特色があり、また呼び名も少し違うのですが、有名なところでは、滋賀県琵琶湖の鮒ずしがあります。
こちらは文字通り、鮒を使ったもので、塩を混ぜたご飯に内臓を取って塩漬けした鮒を漬けたものです。
それが時間とともに乳酸発酵し、タンパク質がアミノ酸へと変化し、酸味がかったなんともいえない旨味をもった一品になります。
漬ける期間は、「はんなれ」と呼ばれる短いもので数日~数週間、一般的には数か月から数年間。
鮒のほかに鯉や鮎、オイカワ、ハイジャコなどを使ったものがあり、昔から海のない地方の貴重なたんぱく源でした。
また、海のある地域でも、鯵や鯖を使った寿司があり、特に石川県や富山県などで冬の寒さを利用して作られるかぶら寿司は有名です。
こちらは蕪と鰤を漬けた物です。
さらに日本海側を北上すると、秋田、青森そして北海道沿岸部などで食されている、はたはたやほっけ、にしん、鮭などと米麹を使って作られる「スシ」(鮓)と呼ばれる飯寿司があります。
なれずしの種類と今
和歌山県新宮市は「熊野」と呼ばれるエリアの一部ですが、この熊野でも昔から、寒流に乗って南下してきた秋刀魚を使ったなれずしが作られ、食されています。
秋刀魚ははるばる三陸沖から南下してくるので、熊野灘あたりで捕獲される頃には、脂が落ちています。
しかし、それこそが、質のよい秋刀魚のなれずしをつくるうえで欠かせない条件だそうです。
北海で獲れる秋刀魚が10~20%もの脂を含んでいるのに対して、紀州沖や熊野灘で獲れる秋刀魚の脂肪含有量は4~5%ほどだそうです。
・秋刀魚のなれずし
秋刀魚はまず背開きにして、内臓や骨を取り除き、塩をまぶして一年間寝かせます。
それをご飯とともに漬け込み、3週間~一ヵ月ほどで「秋刀魚のなれずし」が完成します。
鮒ずしなどは一緒に漬け込んだご飯は食さないか、もしくは別に食しますが、秋刀魚のなれずしは、漬け込んだお米とともに食べます、その食感はお餅に近いです。
このなれずしは、別名「小言ずし」とも呼ばれるそうで、各家庭によってそれぞれのレシピ、それぞれの味があり、またその年の出来具合や漬かり具合の度合いも様々、それを食べる人たちの好みも様々、よって、なれずしを口にした人々がその度に、各々一家言をぶつそうで、そんな呼び名が付いたそうです。
なれずしは一般的に、米と、タンパク質である魚から作られ、その発酵の過程で増えた乳酸菌が豊富に含まれているので、医長にとても良いそうです。
「今日はちょっと飲み過ぎたな」という日には、なれずしを食べると乳酸菌の力で翌日は二日酔いにならず、胃ももたれないそうです。
また豊富に含まれる乳酸菌が胃腸を整えることにより、美肌効果もあると言います。
特に30年もののなれずしなど、一日一舐めするだけで、整腸作用は驚くべきものがあるそうです。
それによって便秘も解消され、蓄積されていた毒素も徐々に身体から抜けて、美しい肌になるであろう事は想像に難くありません。
日本の伝統料理
なんとも寂しいことですが、なれずしに限らず日本の伝統的な食品は、食生活の西欧化により衰退消滅の一途をたどっています。
特にこのなれずしは、作り手が高齢化し、作る家庭も減少してきていることから、その味が消えつつあると言います。
手間隙かかる調理過程や一部の材料が手に入りにくくなったのも要因と言われています。
そんななれずしですが瓢喜西麻布店では11月頃は鮒ずしをご用意してスタッフ一同心よりお待ちしております。