ブログ八重洲店
珍味 唐墨について
いつも瓢喜八重洲店をご利用頂き誠にありがとうございます。
木枯らしが吹き始め、冬の前触れを実感する季節となりましたが
皆様におかれましては益々のご繁栄のこととお慶び申し上げます。
これから、忘年会などお集まりいただくことも多くなってまいります。
寒い季節には、当店名物の出ししゃぶや、この時期ならではの食材を使った会席など
是非ご賞味くださいませ。
今回は、お酒の最高の「あて」唐墨についてお話をさせて頂きます。
唐墨は「鯔子」と記されるようにボラの卵巣の加工品を指しますが、ほかにも鰆やブリの卵巣を用いたものもあるそうです。
その形が中国の墨に似ていることから「唐墨」と表記するようになりました。
鯔の卵巣を血抜きしてから10日間以上塩漬けにし、塩抜きしたのち板などで挟んで加圧成形しながら天日で10日間程乾燥させて作ります。
日本では江戸初期から贈答品として重んじられて来ました。
イタリアでも鯔の卵巣を塩漬けにした「ボッタルガ」が伝統的に作られています。
鯔は海と河川を回遊する性質があり、毎年9月以降に産卵のため特定の湾内に群れをなして押し寄せ、その機を逃さないで刺し網を仕掛けその鯔を追い込むために枝木で海面を叩いたり、大きな石を投げ入れる独特の鯔漁をしています。
漁獲した鯔の雌から取り出した卵巣を唐墨に加工しますが、活きた鯔から取り出した卵巣が食材としては最も適しています。
鮮度が落ちるとよい唐墨が出来ないのです。
鯔は全国的に漁獲がありますが、唐墨加工に加工できるほどの量を確保する産地は少なく、長崎県の野母崎が有名で10月から11月の中旬ごろまでに獲れる鯔が最も最良とされています。
加工は、長崎県や和歌山県などで行われていますが漁獲量が少ないため塩漬けにし冷凍した卵巣も輸入されていて加工も周年で行われています。
工程上難しいのは塩抜きで、膜を破らないようにもみほぐし適度な塩加減と均一な硬さにすることだそうです。
また塩抜きの前の血抜きが不充分であるとムラになり商品価値が落ちてしまいます。
すでに加工されている唐墨そのものは、台湾、韓国、オーストラリアなどから輸入されているほか、カラスミに似た模造品もあります。
保存食品であるため、あまり旬にこだわらない場合が多いですが、新物は、本来寒風にさらして冬に作ったものが良いとされています。
ただ、現在は周年で作られるので特に冬とは限りません。
唐墨のよしあしは
○形が大きく厚みがある
○薄皮が破れておらず表面全体がなめらかである
○全体的に均一な艶があり綺麗な鼈甲色をしている。
○血合いや寄生虫の取り残しがない物
○電灯の光にかざすと全体が均一に透けていてくもりや斑のない物
○生臭くないもの
以上が良い唐墨の見分け方です。
瓢喜八重洲店では自家製の唐墨をご用意しております。
熱燗や、河豚のひれ酒などのお供に是非ご賞味下さいませ。
従業員一同心よりお待ちしております。
八重洲店 料理長 輿石 修