ブログ京橋店
湯葉について
今回は湯葉についてふれてみたいと思います。
湯葉について
日本で最初にゆばの伝わった比叡山麗の京都や近江(現在の滋賀県大津市)、古社寺の多い大和(奈良県)、そして日光(栃木県)、身延(山梨県)といった古くからの門前町が産地として有名で、京都と大和、身延では「湯葉」、日光では「湯波」と表記されます。
日本では、引き上げた湯葉を生湯葉(または引き上げ湯葉)と呼び、料理の材料にする他、刺身と同様にそのまま食べます。
また、普茶料理でもよく使用されます。
京都の湯葉は膜の端に串を入れて引き上げるため一枚なのに対し、日光の湯波は膜の中央に串を入れて二つ折りにするように引き上げるため二枚重ねになります。
このため、京都のものは薄く、日光のものはボリューム感があるものになっています。
身延では湯葉を何枚も重ねて固めた「角ゆば」も作られています。また、関西の湯葉は生または自然乾燥させることが多く、日光は生または油で揚げられることが多いのが特徴です。
生湯葉の他に、生湯葉を乾燥させた物(干し湯葉)、半乾燥の状態のうちに巻いたり、結び目を作った物(結び湯葉)など、様々な種類が市販されています。
巻いた状態の物は吸い物の具にされることが多く、シート状のものは、復して各種の湯葉巻き料理にされることが多いです。
湯葉とは
湯葉とは、豆乳を加熱した時、ラムスデン現象によって液面に形成される膜を、竹串などを使って引き上げた物で、植物性タンパク質に富む精進料理の材料として有名です。
豆腐との最大の差は製造方法にあります。
豆腐は、にがり等の凝固剤を使用して、大豆の植物性タンパク質を凝固(塩析)させたもので、湯葉は凝固剤を使用せず、加熱により大豆の植物性タンパク質が熱凝固して作られます。
しかし、湯葉は凝固剤を使用しないため、大豆から製造できる量は豆腐の約10分の1程度と少ないのです。
精進料理の材料の一つとして、日本の湯葉は約1200年前に最澄が中国から仏教・茶・湯葉を持ち帰ったのが初めといわれ、日本最初のゆばは、現在の京都府京都市と滋賀県大津市の間に位置する比叡山の天台宗総本山の延暦寺に伝わり、比叡山麓の坂本(現在の滋賀県大津市)に童歌「山の坊さん何食うて暮らす、ゆばの付け焼き、定心房」として唄われたことが歴史的な記録に残っています。
また、湯葉は姥(うば)の訛りであり、黄色く皺(しわ)のある様が姥の面皮に似ていることからそう言われるようになったとの俗説があります。
精進料理・懐石料理と湯葉
日本の精進料理は、平安時代までの日本料理は魚鳥を用いる反面、味が薄く調理後に調味料を用いて各自調製するなど、未発達な部分も多かった様です。
それに比べて禅宗の精進料理は、菜食であるが、味がしっかりとしており、身体を酷使して塩分を欲する武士や庶民にも満足のいく濃度の味付けがなされていました。
味噌や、すり鉢といった調味料や調理器具、あるいは根菜類の煮しめといった調理技法は、後に日本料理そのものに取り入れられることになります。
また、豆腐、凍り豆腐(高野)、こんにゃく、浜納豆(塩辛納豆ともいう)、ひじきといった食材も、精進料理の必須材料として持ち込まれたと考えられています。
この様に、精進料理は日本料理にも影響を与えて成長を促してきました。永平寺式の精進料理は、室町時代から江戸時代前期にかけて普及した本膳料理に通じるといわれています。
また懐石料理も、また精進料理から派生したものです。
現在でこそ、(同音異義の会席料理との混同もあり)豪華なものとなっていますが、当初は質素で季節の味を盛り込んだものであり、精進料理の精神が活かされたものでありました。
普茶料理は、中国料理の調理法が日本風にアレンジされながらも伝来し、くず粉を利用した煮物や炒め物、揚げ煮といった料理や調理法が普及しました。
野菜を使用する天ぷらは「精進揚げ」などとも呼びます。
昨今では、海外からの外国人観光客や日本に滞在する外国人の中にはビーガンやベジタリアンも多いですが、精進料理は日本では高価な料理であることが多いこと、一般の日本料理では肉や魚が使用されてないように見えても、出汁に動物性材料を使っていることがあることなどから、ベジタリアン向けの、より気軽に低価格で毎日楽しめる精進料理も生まれてきています。
また、近年、アメリカを中心にグルテンの摂取を控えるブームがあり、それに対応して麩を使わないなど、グルテンフリーを謳った精進料理もみられます。
話が少しそれてしまいましたが、ゆばは使う用途によって多様性があり様々な具材との組み合わせでバリエーションが広がり、酢の物、お造り、煮物、和え物、蒸し物、揚げ物、さらには御椀の具にと活躍する食材で使い勝手がいいですね。刻んだ湯葉をまぶして蒸してシューマイの様にしたり、春巻きの皮の代わりにしたり、サラダに使ったりもできます。
今回は湯葉についてのお話でした。いろいろな食べ方で栄養化の高い湯葉を楽しんでいただきたいと思います。
ありがとうございました。
瓢喜 京橋店 料理長 大日向勝弘